郵政法案と競争戦略

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郵政法案と競争戦略

  • 2005年07月20日(水)
  • カテゴリ:政治・経済・戦略
  • コメント:2

 郵政法案の参院決議を前に、また小泉総理が「参院で通らなかったら即衆院解散」とムチャクチャな事を言っているけれど、どうして彼はいつも頑ななのか、ゲームの理論を使って説明できそうな気がするので以下に書こうかなと思ったのだけど、それより先に、ゲームの理論による、ある種の競争戦略を書いてみようと思う。


 ゲームの理論を使うと、ある種の業界の競争戦略が説明できることがある。ここでひとつ、仮定の話をする。

 

 第一章 均衡

 あなたは業界最大手の家電量販店Y社のマネージャーに就任した。そして、あなたは業界第二位の家電量販店K社に対して価格競争を仕掛けるかどうか検討しているとする。仮にあなたが価格競争を仕掛けた場合、K社が対抗すれば、競争が激化しY社とK社の利潤は (0,0) になり、K社が対抗しなければ、両社の利潤は (100,20) になる。また、あなたが価格競争を仕掛けない場合は、家電の価格は維持され、Y社とK社の利潤はそれぞれ (70,50) となる。この内容に関するツリーは以下のようになる。

    • Yは価格競争を仕掛ける
          • Kは対抗する (0,0)
          • Kは対抗しない (100,20)
    • Yは価格競争を仕掛けない (70,50)

 さてこの場合、Yはどう動くのがもっとも効果的だろうか。この場合、YはKの行動を見て対応を決めることになる。

 K社の行動―仮に、Yが価格戦略を仕掛けたとすると、Kは対抗すれば利潤0に対して、対抗しなければ20である。よって、Kは価格戦略に対抗しない。
 Y社の行動―であれば、Yの利潤は、価格競争を仕掛けた時は100で、仕掛けない時は70だから、Yは価格戦略を仕掛けるべきとなる。また蛇足ながら、消費者はY社の低価格販売の恩恵を受けることができる。

 

 第二章 広告の効果

 ところが。

 Kの利潤は、価格競争のない時に最大化する。よってKの理想は、価格競争のない世界である。しかし、このままではY社との価格競争でシェアを失う事は目に見えている。そこで、Kは、

「Yのチラシより一円でも高い時は即刻値引します!業界最安値目指して!」

とのキャンペーンを始めるのである。そうするとどうなるか。これは「Y社が価格競争してきたら、こっちは100%対抗しますよ」との予告状の役目を果たす。その場合、Yが価格競争を始めれば、自動的に激しい価格競争に突入し、両社の利潤は (0,0) になって、どちらも儲からない。ただ消費者が儲かるだけである。よって、Yは価格競争は仕掛けず、両社の利潤は (70,50) となる。この場合、一見は消費者利益にかなうような気のするK社のキャンペーンだが、実際は損なっているといえよう。

 

 さて郵政法案。大詰めを迎えている。参院での議決を前に、小泉首相は「可決しなかったら衆院解散」を声高に叫び、片山虎之助参院幹事長は「(参院で)否決され衆院解散したら、自民党は分裂選挙になる。そうなると自民党は崩壊し、政治は空白になる」と危機感を強めている。 なぜこのようなことになるのだろうか。

 ここで、あなたが自民党参院議員であり、あなたの票で郵政法案の可否が決まると仮定してみよう。その場合、もしあなたが賛成票を投じれば、郵政法案は可決し、あなたには特段利益はないが、小泉首相や党執行部は利益を得る。この時の両者の利益を (0,100) とする。

 次に、もしあなたが反対票を投じれば、郵政法案は否決され、小泉首相は衆議院を解散するか、解散しないかの選択を迫られる。
 解散した場合、自民党は執行部派(小泉派)と反執行部派(反小泉派)に分裂し、総選挙でかなりの苦戦が予想される。また公明党との選挙協力体制が瓦解して連合の利益を失い、自民公明共に大幅に議席を減らし、民主が第一党に躍り出る可能性すら考えられる。そして反対票を投じたあなたは自民党公明党の衆院議員に恨まれ、次回参院選で協力を得る事が難しくなると予想される。この時のあなたの利益と執行部の利益を (-40,-100) とする。
 解散しなかった場合、あなたは特定郵便局長会などの支持を得る事が出来るだろう。一方自民党執行部は、瓦解こそしないものの、求心力は大きく損なわれる。この時の両者の利益を、 (40,-40) とする。これらに関するツリーは以下のようになる。

    • あなたは郵政法案に反対する
          • 衆議院は解散する (-40,-100)
          • 衆議院は解散しない (40,-40)
    • あなたは郵政法案に賛成する (0,100)

 この場合、何事もないのなら、あなたが郵政法案に反対すれば、小泉首相は解散するよりは解散しない方が損失が少ないので、解散しない事になる。よってあなたの最適化行動は、郵政法案に反対することになる。いくら執行部が「否決されれば解散するぞ解散するぞ解散するぞ徹底的に解散するぞ徹底的に解散するぞ徹底的に解散するぞ」と唱えた所で、解散しない方がマシなのだからブラフなのは明白である。

 しかし。

 誰が何と言おうと靖国参拝を決行するあの小泉首相である。やると言ったら必ずやる。よく言えば有言実行、悪く言えば意固地で頑ななクソ親父である。その奴が「やる」と言っているのである。奴ならばやるだろう。必ずするに違いない。とすれば、反対すれば (-40,-100) になってしまう。それだけはイヤだ…よってあなたは郵政法案に賛成し、小泉首相は実を取ることができる。

 というわけで、小泉首相は事ある毎に「否決されれば衆院解散」を唱え、執行部は「解散すれば自民党は分裂して大混乱」を強調するのである。また、この戦略のポイントは、普段から実行力を見せつけておくことが肝であり、その点で小泉首相はゲーム強者と言えるだろう。

 

<参考・引用文献>
家電業界の競争戦略は、2005年LEC診断士模試第二回の経済学・経済政策 問7を引用、改変して使用しています。この場でお礼申し上げます。

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コメント(-件)(2件)

うんこ:

 お疲れさん。ナイス見識。ゲーム理論的にどうなのかは知らないけど、会社・現場・対人関係でも、そのへんの機微をうまーく利用していけば実力以上に認められたりのし上がれたりするかもよ。まぁ大概の場合、そこまでする必要はないんでしょうけど。

 ちなみに、私も「絶対アスキー(当時)入る」って高校の頃から言い張っててホントに入ったら、それ以後地元の友人に一目置かれるようになりましたな。あと、身の回りの下らない出来事(バカ系)を率先して有限実行しておくと、いざというとき「やるよ?」って言うだけで人がその気になったり動いたりして楽しいです。

 ゲーム理論的に強者になりたかったら、「いざとなったらひとりでやる精神」を常に忘れないこと。それだけじゃないかと。
 めむひさんは今ひとりでお勉強してるんだから、その道の素質は十分あるかもですよ? なんつって。頑張ってね。

  • 2005年07月21日(木)21:40:58
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  • 編集
めむひ:

 どもです。この手の文章って読んでくれる人少ないだろうなあと思いつつ書いたんですが、ありがとうございます。てか、アスキー入ったって普通に凄いです。しかも押し入ったらしいし。すげえ。やっぱ実行力ある人間は強く見えます。

 私のほうは、今も一人で勉強してますけど、相変わらず友達いないし、寂しさや人恋しさが堪えがたくて、いつ人格が堰を切ったように流れ崩れていくかわからない状態で恐いです。先端恐怖症の人は先端そのものが恐いのではない、いつか自分で自分を突いてしまうのではないかという制御不能な自分が恐いのだ、とかそんな状態です。日々挙動不審かも。参った。試験の方は、一次は大丈夫そうなのは救いですけど気を抜かずに頑張るですよ。ではでは。

  • 2005年07月23日(土)00:45:24
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