[本]伊勢崎賢治「武装解除―紛争屋が見た世界」(講談社現代新書)

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[本]伊勢崎賢治「武装解除―紛争屋が見た世界」(講談社現代新書)

 読了。本書は、東チモール、シエラレオネでPKOミッションに参加し(UNTAET,UNAMSIL)、アフガニスタンで日本主導の武装解除を指揮した著者が、紛争処理の現在を教えてくれる貴重な本。

 近年の紛争処理はDDRというプロセスに従って行われる事が多いらしい。DDRとは、武装解除、動員解除、社会再統合のこと(Disarmament,Demobilization,Reintegration)で、本書ではそのDDRの視点を中心にして書かれている。

 単純に武装解除を求めても応じるバカはいない、そこでどのようなプロセスをもちいて彼らに武装解除に応じさせるか。また、武装解除をしても、指揮命令系統が残っていると兵士達は再動員される可能性がある。だから指揮命令系統を解体するために兵士一人一人を彼らの上官に"解雇"させ、動員を解除する。しかし元兵士達が社会に溶け込むのは困難が伴うし、そのままでは社会からあぶれて、また兵士(盗賊)稼業に戻る可能性が高い。よって復員事業は必須となるのだが、そもそも貧しい国で国民の多くが何らかの援助を必要としているのに、よりによって元兵士だけが優遇されるとは何事だ、という批判もあり、復員事業はやりすぎてもいけない。等々。高度な調整能力と脅迫を恐れず常に合理的判断のできる精神がなければ務まらない仕事だと思った。

 また、NGOなど人道組織の援助で小学校などの癒し系施設はボコボコできるのに、刑務所などの必要悪な司法施設はちっともできない。だから戦争犯罪者を捕まえても留置場所も拘置場所もないし、裁こうにも検察機能もほぼなくて裁判できないし、そもそも刑務所がないから裁いた所でどうしようもない。よって釈放せざるを得ないのだけど、「司法キャパが不足しててどうしようもないから釈放します」なんて本音は間違っても言えないから、「寛大な処置」や「人びとは和解し融和すべきだ」などのお題目を盛んに唱えて大半を無罪にする、というくだりとか面白かった。刑務所建設では寄付金は集まらないから小学校しか建たないって。それってギャグですか。
 
 そういう現場の話以外にも、部族社会のアフガンに民主化や単一国家を押しつけるのは間違いだとする文化人類学的意見は実務家にすれば迷惑なだけだ(民主化や単一国家化という旗印を揚げなければ国際社会から金は出ない)とか、あるいは人道を標榜するNGOが政治に口出ししないのはおかしい(NGOは紛争が飯の種だから本心は紛争を期待している、だから口出ししない)など、善人面している人達への攻撃もあって痛快でもある。
 ぶっちゃけPKOって何よ、と疑問に思っている人や、スーダンPKOへの自衛隊派遣の是非について考えたりする人には超お勧めの本です。

 著者は東チモール知事時代(2000年3月~2001年5月)にweb日記を付けていて、当時私もナナメ読みの読者だった。こちらは暫定政府知事の仕事がよりリアルに分かるので、実情や実務に興味ある方は面白いかも知れないです。


 今日の読書メモ―
あらゆる紛争は首謀者の政治的野心から始まる。
また、国際平和ミッションには常に3つの視点を忘れないこと。
一つ、目前にある安全、食料、医療問題。
二つ、現地国内の政治問題。
三つ、国際社会の動き。


 個人的には、国連の汚い部分の描写も期待したけどその辺はあまりなかった。なんか色々あるじゃん、UNHCR(難民高等弁務官事務所)がさ、職員が援助物資の卵三個と引き替えに現地女性をレイープしたとか、現地女性動員して売春組織作って派手に商売していたとか、または8千人程度しか存在しない難民を40万人います至急物資を送って下さい人類の危機です!!と喧伝していたとか難民ビジネス関係のお話が色々さ。あとは機関設立の際に都市側から誘致関係でアレコレとか。最近だと石油食料交換プログラムとか。

 まあ国連内でもそうした不正をしている人はごく一部で、ほとんどは高い志を持った良識的な人々なんだろうと思うけれど、国連という官僚機構はチェック機能がほとんどないから不正を働いてもバレにくいし、実体はどうなんだろうと思ってしまいます。でも考えた所でどうしようもないし、そもそも官僚機構が腐敗するのは普遍的な事で国連に限ったことじゃないし考えるの止めよう。
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