[本]『スカイ・クロラ』(森博嗣 中央公論新社)

スポンサーサイト

  • --年--月--日(--)
  • カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

<< 1つ古い記事「[本]『AΩ(アルファ・オメガ)』(小林泰三 角川ホラー文庫)」 | 1つ新しい記事「[本]アイデアのヒント(ジャック・フォスター著 青島淑子訳 阪急コミュニケーションズ)」 >>

[本]『スカイ・クロラ』(森博嗣 中央公論新社)

 読了。醒めた子供の心を持つ特殊な人々が戦闘機に乗って戦争という仕事をする話なんだけど、主人公たちは何か秘めてますよいろいろ謎がありますよのサインだけは出しつつも解説はほとんどない、読まずに感じろ小説。嫌いじゃないしそこそこ面白くもあるし、随所に散りばめられた森先生の気の利いた比喩も健在だ。
例えば、初対面の女の子と二人きりで部屋に残されて、

辺りにすっかり充填した重苦しい沈黙で身動きが取れなくなった。こういうときって、空気が沢山の風船になったみたいに、ぎしぎしと音を立てそうだ。

とかね。うまい。

 でも、読んでてイラつく部分も確かにあるというか、いわゆる「醒めた感覚」を私が嘘っぽいと思うからだけど。それって単なるかっこつけだろうとしか思えないし。「麻痺した感覚」ならよくわかるんだけどね。それは私にはなじみ深い。麻痺は陰惨な現実からの精神防御。醒めた感覚は…さあ。よくわからない。
 そうそうドッグファイト部分はやっぱり面白かった。わくわくした。
 
 ということで、これは森氏のミステリじゃない系読み物の中ではややイマイチの部類。また、各章頭にはサリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」が引かれているのだが、「ナイン・ストーリーズ」は一部では電波で名高い小説でもあり、つまり「この小説は電波ですから、無粋な解釈はしないでね(笑)」という予防線かと思われる。こういう作者の態度も減点材料だ。

 全体的には、雰囲気は悪くないけど、冷静に読んでると選民意識みたいのが色々見えて腹が立ったりあれこれあってつまり主人公がもてたりすぐ人に信用され打ち解けるのがむかついてアレだ。そんなの私にはぜったいあり得ないのに。(とこんなのは森作品全般に言えたりもするが、しかし私は森先生のファンである。犀萌も紅子さんも好きだった。とゆーか、そもそも私はひがみ根性全開であり、モテる奴や優秀な奴を見れば誰だろうとムカつくのだ。ええ。)
 
・総括―基準点60点。夢落ちかつ「電波ですよ」で-30点。謎がありげに薄っぺらで-20点。主人公は普通の人間を装っている醒めた人で生まれつき優秀で他人から信頼されモテるという部分で-30点。仲間のパイロットやメカニックの笹倉氏はいい奴で+40点。トータル20点。


 話変わってドッグファイトについてのメモ代わりをいろいろ。
 bailout 西へ 天気 迎え角 とり らだーのひこうき
 また、板野一郎氏の発言が面白かったので引用。

(『マクロス』などで自分が作画する時は一度にミサイルを)6発ぐらいは撃ってるんですよ。少なくとも4発ぐらいは撃つんです。その内の2発が敵機を追尾してまっすぐ飛ぶ「マジメな優等生」。もう2発が先読みをする「頭よすぎるミサイル君」(笑)。パイロットっていうのは、エースパイロットでも(耐えられるのは)9Gから11Gまででしょう。プラス(の加速度)ではその辺りまでしか耐えられない。マイナスなら3Gまで。マイナス方向に行くと、レッドアウトして、眼球の血管が切れて修復できないので、マイナス方向のGはかけない。かけるとしたら、ブラックアウトする方向──血が下がっていく方だ。だから、パイロットのGスーツっていうのは血圧計(の腕に巻くバンド)のでっかいのをここ(足)に巻いて、血が下に行かないようにしてある。それで、生身だと9Gまでしか耐えられないのを11Gまで耐えさせて、Gに耐えて敵の後ろをとって敵を落とすっていうのが、ドッグファイトなんです。飛行機の戦いは、敵の後ろを取った方が勝ち、と言われてて、犬にとっては尻尾が弱点なんで、喧嘩する時にお互いグルグル尻尾を噛みに行くんだけど、その犬のケンカと同じなんですよ。それで、頭よすぎるミサイル君は「このパイロットは11Gまで耐えられるとして、あの機体精度ならマッハ2で旋回できるから、たぶん限界を保ちながら、マックスでそこに行くんだろう」と計算して、先にそっちへ行く。で、そっちに行った時にちょうど当たるようにする。まあ、先読みをするわけです。で、もうひとつのタイプがあって、これが「バカミサイル」(笑)。前の2タイプは基本的にはヒット狙い。最後のタイプはフマジメで、劣等生でアバウト。優等生も先読み君も行かないところに適当に飛んでいって、「僕達は当たらなくていい」と言って近くを飛ぶ。近接信管ってやつで、当たらなくてもいいから近くまで来て、そこで爆発して、いやがらせをする。羽や機体に破片を当てたりして、調子を悪くさせる。大体、優等生、先読み君、バカミサイルが一緒に飛んでいって。で、バカミサイルはバカだから、カメラがいると必ず寄ってくる(笑)。「イエーイ」なんていって、カメラに挨拶をしてから行く。そういうミサイルなんですよ。


 カメラに挨拶するバカミサイルが愛らしくて良い。そんなものを発明する板野氏も愛らしいと思った。
スポンサーサイト

<< 1つ古い記事「[本]『AΩ(アルファ・オメガ)』(小林泰三 角川ホラー文庫)」 | 1つ新しい記事「[本]アイデアのヒント(ジャック・フォスター著 青島淑子訳 阪急コミュニケーションズ)」 >>

コメント(-件)(0件)

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。